午後になると、どうにもこうにも体が重い…そんなあなたへ
「昼食のあと、気がつくと意識がふっと遠のく」
「午後の仕事がまったくはかどらない」
「コーヒーを飲んでも眠気が取れない」
そんな経験、ありませんか?
私自身、50歳を過ぎたあたりから昼過ぎの“沈没タイム”が日課になってきました(笑)。何かの不調かと心配していたのですが、調べてみれば、これは自然な生体リズムのひとつ。特に中高年になると、体内時計の調整機能が落ちてきて、午前と午後の“波”をダイレクトに感じやすくなるのです。
この記事では、「昼寝=サボり」という誤解を解きながら、
“10分で体と頭がシャキッとよみがえる昼寝の極意”をお伝えします。
昼寝が必要な体になる理由〜中高年こそ昼寝を取り入れるべき
午後になると「どうも体が重い」「集中力が続かない」…そんなふうに感じたことはありませんか?
実はそれ、年齢のせいでも気のせいでもなく、体の自然なリズムがそう仕向けているのです。
人間の体には、“サーカディアンリズム(概日リズム)”と呼ばれる体内時計が備わっています。これは約24時間の周期で、睡眠・覚醒・体温・ホルモン分泌などをコントロールしています。

このリズムの中には、1日に2回の“眠気の波”が含まれています。
- 1回目:深夜2〜4時ごろ(深い睡眠に入る時間帯)
- 2回目:午後13〜15時ごろ(いわゆる“昼過ぎの谷間”)
つまり、午後1時から3時のあいだに「ウトウトする」のは、ごく自然な現象。
この現象は専門的に「ポストランチディップ(post-lunch dip)」とも呼ばれており、食事の有無に関係なく、体内リズムによる“集中力の谷”とされています。(参考:Lavie, 1991/Borbély, 1982)
さらにこの時間帯には、体の自律神経のバランスも変化しています。
普段、活動的な時間帯には「交感神経」が優位になりますが、午後のこの時間は自然と「副交感神経」が優位になり、体が休息を求めるモードに入るのです。
これは若い人でも起こりますが、中高年になるとより顕著になります。
というのも──
- 加齢とともに交感神経の反応が弱まる
- 夜間の睡眠が浅くなり、疲労が昼まで残る
- ホルモンの調整機能が低下し、リズムがズレやすくなる
といった変化が起こるためです。
(出典:Nagai et al., 2004/厚生労働省e-ヘルスネット)

実際、60代の男性患者さんが「午後になると頭がぼーっとして、仕事にならない」と言っておられました。その方に“10分から15分程度の昼寝”を習慣にしていただいたところ、頭がスッキリして夕方の疲労感も軽減。「集中力が午後まで持つようになった」と笑顔で話してくれました。
午後3時までの間に“15分”程度がちょうどいい!中高年に最適な昼寝の取り方
では、昼寝はどのくらいがベストなのか?
答えは、15分程度。
意外と短いと感じるかもしれませんが、これには科学的な理由があります。
【昼寝の黄金ルール】
✅ 時間は15分以内
✅ 13時〜15時の間にとる
✅ 横にならず、椅子にもたれる程度でOK
✅ 眠れなくても「目を閉じる」だけで効果あり

*パワーナップとは:15分から30分程度の短い仮眠。
私が往診先の80代女性も、午前の体操後に「10分だけ、目を閉じる時間」を取るようにしてもらったところ──
「昼寝したほうが午後の歩行が安定するのよ、不思議ねぇ」とニコニコ。
その後、転倒も減って、内科の先生からも「最近元気ですね」と驚かれていました。
NGな昼寝の特徴|逆に疲れる“間違った昼寝”とは?
「昼寝が大事なのはわかったけど、ついつい30分寝ちゃうんです…」
こうした声も少なくありません。
ですが、30分以上の昼寝は「深い眠り」に入りやすくなり、
起きたあとの“頭のぼんやり感”がなかなか取れません。
しかも、夜の眠りが浅くなる→翌日さらに眠い→また昼寝という悪循環に。
特に避けたいのはこんなパターン:
☑ ご飯のあとにそのままこたつで寝る
☑ 1時間以上がっつり寝てしまう
☑ ソファで首がガクンとなる姿勢
こうなると、昼寝のつもりが「ぐったりタイム」に。
呼吸も浅くなり、肩や首のこりが悪化してしまいます。
昼寝×環境づくり|たった3つの工夫で効果がアップ!
昼寝の効果を最大限に引き出すには、ちょっとした“ひと工夫”が効きます。
① アイマスク or タオルで視界をシャットアウト
薄暗いほうが副交感神経が優位になり、リラックスしやすくなります。
目を閉じるだけよりも、まぶたをさえぎる工夫があると◎
② タイマーを必ずセット
10分〜15分でアラームを。二度寝は厳禁!
スマホの“睡眠サウンド付き”アプリを使うと、自然に眠れます。
③ 首に負担がかからない姿勢
できれば、背もたれのある椅子で軽くもたれて。
首に小さなクッションやタオルをあてると、起きた後もスッキリ。
ちなみに私は、100均で買ったネックピローが相棒です(笑)
【指導現場の声】部活後の昼寝でパフォーマンスUP!
これはある高校バスケ部の話です。
土日の1日練習で午後練習前に、生徒たちが眠そうにしていたので、
「練習前に10分だけ目を閉じよう」と言って体育館の隅で“仮眠ゾーン”を設置。
最初はふざけていた生徒たちが、数回続けた後には「先生、昼寝ってマジで効く」と言い出すように。
部活後の疲労回復が早くなり、ケガのリスクも減少。
なにより、午後の集中力が上がったのです。
これ、中高年にも当てはまります。
昼寝は、パフォーマンスを取り戻す“スイッチ”です。
まとめ:昼寝は「中高年の最強リセットボタン」
昼寝はサボりじゃない。
むしろ「ちゃんと活動するための再起動」なんです。
✅ 午後の疲れが取れない
✅ 夕方にイライラしやすい
✅ 夜の睡眠が浅くなった
そんな悩みを抱えている方こそ、まずは10分、目を閉じることから始めてみてください。

【読者へのひとこと】
60歳を過ぎたあたりからでしょうか。
ようやく「昼寝って、ただの贅沢じゃないんだな」と気づくようになりました。
今では、昼食を終えたあとにコーヒーをひと口飲んで、15分だけ目を閉じるのがちょっとした“日課”です。
たったそれだけなのに、午後の自分がまるで別人。体も気持ちも、スーッと軽くなるんです。
ただし、ひとつだけ注意点があります。
うっかり首が“カックン”といかないように、背もたれのある椅子+タオルのクッションは必須ですよ(笑)
体が軽くなるだけじゃない。
午後の自分が、ちょっと優しくなれるんですよね。
疲れたら、ちゃんと休む。
それは怠けじゃなくて、“これからも元気でいるための”ひと工夫です。
今日から、あなたの午後を変えてみませんか?