午後になると腰が重い。その正体は「疲れ」じゃなく「座り方の積み重ね」
接骨院でいちばん多い相談のひとつが、「午前中は大丈夫なのに、午後から腰がつらいんです」です。
この“午後から感”って、けっこう特徴があります。
朝は体がまだ元気。
昼を過ぎると、腰がじわじわ重い。背中も丸まり、呼吸が浅くなって、集中力まで落ちる。
なのに立って歩くと少し楽。……これ、筋肉の根性が足りない話じゃありません。座り方のクセが、午後に請求書みたいに届いてるだけです。
スポーツ現場でも同じで、高校バスケ部の子が「走ってるときは平気だけど、授業のあと腰が固まる」と言う。
野球部の選手が「移動のバスで腰がやられる」と言う。
高齢者スポーツ教室でも「座ってる時間が長い日は、夕方に腰が抜けそう」となる。
年齢も競技も違うのに、原因が同じ。ここ、ちょっと面白いところです。
腰は「座る姿勢」に弱い。理由はシンプル
座っていると、体はラクをしようとして背中が丸まります。
背中が丸まると、骨盤(背骨の土台)が後ろに倒れて、腰の自然なカーブがつぶれやすい。
そうなると、腰まわりの筋肉がずっと引っ張られ、別の筋肉はずっと縮みっぱなし。結果、血流も落ちて、夕方に“重だるさ”として出ます。
しかもデスクワークの怖さは、同じ姿勢が長いこと。
同じ姿勢は、同じ場所に同じ負担をかけ続けます。だから午後に来る。遅れて来る。じわじわ来る。
ここで大事なのは「良い姿勢を気合いで維持する」ではなく、勝手に良い姿勢になりやすい椅子の作り方に寄せることです。
まずは3つだけ。午後が軽くなる“椅子の設定”
椅子の座り方って、細かく言い出すとキリがないです。今日は現場で変化が出やすい順に、3つだけに絞ります。
1)足裏を床につける。つかないなら椅子が高い
足がぶらぶらしていると、骨盤が安定しにくく、腰が丸まりやすい。
OSHA(米国の労働安全衛生機関)のワークステーション解説でも、椅子は「足と背中がしっかり支持されるよう調整」し、身体に負担の少ない“中立姿勢(neutral posture)”を保てるように、と書かれています。
足裏が床につかない人は、まず椅子の高さを下げる。
それでも机の高さが合わないなら、足台(なければ雑誌を重ねる)で足裏をつける。
腰痛対策って、腰を揉む前に足元から始まることが多いです。ほんとに。
2)お尻を背もたれに近づける。背もたれは“飾り”じゃない
座面の前のほうにちょこんと座ると、腰が一気に丸まります。
「背もたれに寄りかかるとサボりっぽい」という声、よく聞きます。分かる。でも、腰にとっては背もたれは“補助輪”です。使わない方が難しい。
ポイントは、背もたれに“だらん”と預けるのではなく、骨盤の位置を支えてもらうこと。
腰のあたりに軽く当たるだけでも、午後の疲れ方が変わります。
ここでもうひとつ、座り方で見落とされがちだけれど、午後の腰を左右する大事なポイントがあります。
それが「お尻の位置と膝の位置の高さ関係」です。
実は、
膝の位置よりも、お尻の位置がわずかに高くなるように座ると、骨盤は自然に起き上がります。
無理に背すじを伸ばさなくても、背骨が上に積み木のように乗りやすくなる。これが大きい。
逆に、膝のほうが高い姿勢になると、骨盤は後ろに倒れやすくなります。
すると腰のカーブがつぶれ、背中が丸まり、午後になる頃には腰が重くなる。
これは筋力の問題というより、構造的にそうなりやすい座り方です。
スポーツ専門学校の授業でも、この話をすると学生が「あ、これ自分だ」と一斉に椅子を触り始めます。
高齢者の運動教室でも同じで、椅子をほんの数センチ調整しただけで
「座ってるのが楽になった」「腰が伸びる感じがする」と反応が変わります。
具体的には、
・椅子の高さを少し上げる
・座面の奥までお尻を入れる
・足裏は床につけたまま
この状態で、お尻が膝より少し高い。
それだけで骨盤が立ち、姿勢を“頑張らなくて済む姿勢”になります。
午後に腰がつらくなる人ほど、
「姿勢を良くしよう」と背中を意識しすぎていることが多い。
でも本当に変えるべきなのは、背中ではなく座った位置関係です。
3)肘の位置を「体の横」に戻す。肩が前に出ると腰が巻き込まれる
マウスやキーボードが遠いと、腕が前に出て、肩がすぼみます。
肩が前に出ると、背中が丸まり、最後に腰が巻き込まれる。連鎖です。
OSHAの説明でも、よく使うものは届きやすい位置に置き、無理な姿勢を減らすように、という考え方が示されています。
机の上の配置って地味なんですが、腰痛の“午後の差”を作ります。
「背すじを伸ばす」が続かない人へ。コツは“骨盤”にある
「背すじを伸ばしなさい」って、言うのは簡単です。
でも午後になると崩れる。
崩れにくくするコツは、背中ではなく骨盤から整えること。
骨盤が立つと、背骨はわりと勝手に積み木みたいに乗ります。
骨盤が倒れると、背骨は勝手に崩れます。こっちの“勝手”は厄介。
骨盤を立てる感覚が分かりにくい人は、座ったまま「坐骨(お尻の下のゴリゴリした骨)で座る」を意識してみてください。
背中を反らす必要はありません。胸を張りすぎると逆に疲れます。
それでも午後に痛むときの“現場あるある”3つ
接骨院の患者さんで多いのが、次のパターンです。
1,椅子が高いのに机も高い。足がつかず、腰で踏ん張る。午後に腰が負ける。
2,座面が柔らかすぎて沈む。骨盤が後ろに転がる。腰の筋肉がずっと耐える。夕方に重い。
3,画面が低くて首が前に出る。首と肩が固まり、背中が丸まり、腰が巻き込まれる。最後に腰が叫ぶ。
往診で寝たきりの方を診ていると、「同じ姿勢が続くと身体が固まる」という事実を、もっと露骨に見せられます。
動けない人ほど固まる。だから、動ける人も“動かない時間”が長いほど固まります。理屈は同じです。
休憩は「長く」より「こまめ」が効く
座り方を整えても、座りっぱなしはやっぱり腰にきます。
ここは気合いじゃなくルール化が勝ちです。
WHO(世界保険機関)は座りっぱなしを減らし、身体活動で埋め合わせる考え方をガイドラインで示しています(座位行動を減らす/身体活動を増やす)。
厳密に「何分ごとに立て」と決め打ちする一次情報を、私はこの場で確実に提示できません(わからない)。なのでここは現場目線でいきます。
おすすめのやり方は、トイレ・給水・コピーなど、生活動作に“立つ”を紐づけること。
ストレッチを完璧にやらなくていい。立って、2〜3回深呼吸して、肩をすくめて落とす。それだけでも腰の午後が変わります。
受診が必要な腰痛もある。ここは線引きしておきます
座り方の話をしてきましたが、腰痛には医療的な確認が必要なケースがあります。
発熱、安静にしても強い痛みが続く、下肢の強いしびれや力が入らない、排尿排便の
異常がある、夜間痛が強い、事故や転倒後の強い痛みなどは、専門家に確認が必要で
す。ここは我慢して根性でどうにかする領域ではありません。
午後の腰は、午後に作られるんじゃない。午前から積み上がる
最後にひとつ、ちょっと本音。
腰痛って、真面目な人ほど悩みます。「姿勢を正さなきゃ」と思うほど、疲れます。
だから順番を変えましょう。
姿勢を頑張る前に、椅子を合わせる。足裏、背もたれ、肘の位置、膝の位置。まずはここ。
午後の疲れ方は、努力より環境で変えたほうが早いです。
軽くならなかったら、設定をもう一段だけ微調整してください。
新潟市中央区長潟3-2-2 たかやま接骨院 高山 慶市


