接骨院で膝関節痛の問診をしていると、女性の患者さんから、よくこんな言葉を聞きます。
「特に何もしていないんですけどね」
「膝を捻ったり、重いものを持った覚えもないし」
「気づいたら、なんとなく膝が気になるようになっていて」
話しながら、膝のお皿の周りをそっと触るしぐさ。
その表情を見ていると、不安と戸惑いが混ざっているのが伝わってきます。
「年のせいですかね……」
この一言も、本当によく耳にします。
・家事の合間に、膝はずっと頑張っている
女性の生活を振り返ってみると、「立っている時間」は意外と長いものです。
料理中、洗い物、洗濯物を干すとき。
買い物でレジに並ぶ時間や、ちょっとした立ち話。
どれも激しい動きではありません。
だからこそ、体への負担として意識されにくい。
ある患者さんは、こう話してくれました。
「歩くのは平気なんです。でも、台所に立っていると、だんだん膝が重くなってきて」
詳しく立ち姿を見せてもらうと、体重はいつも同じ脚に寄っていました。
流し台に体を預けるような姿勢です。
本人にとっては楽な立ち方。
でも膝にとっては、休む暇のない状態でした。
・「立っているだけで痛い」は、決しておかしくない
「歩いていないのに痛むなんて、変ですよね」
こう聞かれることがあります。
そのたびに、私ははっきり伝えます。
「変じゃないですよ。むしろ、よくある話です」
膝関節は、曲げ伸ばしには強い一方で、
傾いた姿勢やねじれた状態で体重を支え続けるのは得意ではありません。
股関節や足首の動きが落ちると、そのしわ寄せが膝に集まります。
特に女性は、筋力の低下や骨盤の傾きの影響を受けやすい。
その結果、
「何もしていないのに痛い」
そんな感覚につながっていきます。
これは気のせいではありません。
変形性膝関節症の研究でも、
膝の内側にかかる力と、立位時の姿勢との関連は明確に示されています。
参考
・Andriacchi TP, et al. Journal of Orthopaedic Research
・日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン
・接骨院でよくある、こんな会話
施術前、立ち姿を見せてもらうときのことです。
「いつもの感じで、立ってみてください」
そう声をかけると、多くの女性が片脚に体重を乗せます。
骨盤が横に流れ、膝は内側に入り、反対側の脚は添え物のよう。
「これ、楽じゃないですか?」
と聞くと、ほとんどの方がうなずきます。
「はい、楽です」
「気づくと、いつもこうなってます」
そこで私は、少しだけ視点を変えた話をします。
「体は楽なんですけど、膝だけはずっと頑張ってるんですよ」
その瞬間、
「あ……そう言われると、確かに」
と、表情が変わることが多い。
・往診、訪問施術で出会った、忘れられない一言
訪問施術で、ほぼ寝たきりの女性を担当していた頃のことです。
その方は、申し訳なさそうに言いました。
「先生、歩いてもいないのに膝が痛いなんて、贅沢ですよね」
私は首を横に振りました。
「そんなことありません。ちゃんと理由があります」
話を聞くと、トイレや洗面で立つとき、
必ず同じ脚に体重をかけ、家具につかまりながら体を傾けていたそうです。
「その数分が、毎日続いています」
そう伝えると、
「……ああ、ずっと同じ立ち方です」
と、静かにうなずかれました。
膝は、動いた距離よりも、耐え続けた姿勢を覚えています。
・「いい姿勢を意識すると疲れる」理由
女性の患者さんから、こんな声もよく聞きます。
「姿勢を良くしようとすると、逆に疲れるんです」
それも無理はありません。
胸を張りすぎたり、背筋に力を入れすぎたりすると、体は長くもちません。
私が伝えているのは、もっとシンプルな感覚です。
両足に、なんとなく体重が分かれている感じ。
足裏全体で、床を感じている状態。
膝をピンと固めすぎないこと。
これは文章だけで完全に伝えるのが難しい部分です。
気になる場合は、専門家に確認してもらうのが確実です。
・「まだ我慢できる」が、いちばん危ない
膝の痛みについて話していると、
「まだ我慢できるから」
そう言われることがあります。
でも、膝はとても我慢強い関節です。
限界まで黙って耐え、ある日まとめて訴えてきます。
「急に痛くなった」
そう感じる頃には、負担はかなり積み重なっています。
・最後に、女性の患者さんへ
膝の痛みを、年齢だけで片づけないでください。
運動不足だけが原因でもありません。
「どう立ってきたか」
この視点を持つだけで、体の見え方は変わります。
立ち方を変えれば、すべてが解決するわけではありません。
推測ですが、少なくとも悪化のスピードは変わります。
次に、キッチンに立ったとき。
レジに並んだとき。
信号待ちで止まったとき。
ほんの一瞬、
「今、どっちの脚に体重が乗っているかな」
そう自分に問いかけてみてください。
接骨院での会話の中で、
その小さな気づきが、膝との付き合い方を変えた女性を何人も見てきました。
今日も、そんな話をしながら、施術をしています。
新潟市中央区長潟3-2-2 たかやま接骨院 高山 慶市
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