■その“アイシング”、今でも正しい?
「とりあえず冷やせばOKでしょ!」
スポーツ現場で、今でもよく耳にする言葉です。
でも最近、アイシング(冷却療法)の考え方が変わりつつあるってご存じですか?
昔は「ケガをしたらすぐ冷やす」が常識でしたが、いまや専門家の間では、
「冷やしすぎは治りを遅らせる」ことが指摘されています。
私も30年以上、柔道整復師として現場を見てきましたが、
その変化を肌で感じます。今回は、最新のアイシング理論と、
「RICE処置」がどのように変わったのかも合わせて解説します。
■冷やすのはいつ?――アイシングの基本ルール
アイシングが有効なのは、ケガ直後(急性期)の短時間。
ねんざ・打撲・肉離れなどで熱感や腫れが出ているときに冷やすと、炎症を一時的に抑えられます。
しかし、翌日以降もずっと冷やし続けると、
修復に必要な血流まで止めてしまうのです。
つまり、「急性期に短く冷やす、慢性期は温める」これが正しい使い分けです。
■正しいアイシング時間は?――15〜20分が限度
現場でよく聞かれるのが「どのくらい冷やせばいいですか?」という質問。
答えは、15〜20分が目安です。
私は高校バスケ部のトレーナー時代に、
「先生、1時間冷やしてもいいですか?」と聞かれたことがあります。
「そんなに冷やしたら、皮膚が冬眠するぞ!」と笑いながら止めました(笑)。
実際、30分を超えると皮膚温が下がりすぎて、
血管が“これ以上は危険”と判断し、逆に血流を戻す反応が起きます。
結果的に、炎症が悪化したり回復が遅れたりするんです。
【重要】RICE処置からPEACE&LOVEへ:時代は変わった
♦️旧来の考え方:RICE処置とは
以前のケガ対応といえば、「RICE処置」が定番でした。
- Rest(安静)
- Ice(冷却)
- Compression(圧迫)
- Elevation(挙上)
これが40年以上、世界中のスポーツ現場で使われてきました。
ところが、近年この理論に見直しが入ったのです。
理由は3つ。
- 長すぎる安静で筋力・柔軟性が低下する。
- 冷やしすぎ・抗炎症薬の使用が、自然な回復プロセスを妨げる。
- 炎症は「敵」ではなく「修復の第一段階」だとわかってきた。
つまり、冷やすこと=治すことではない、という時代になってきています。
新しい考え方:PEACE&LOVE理論とは?
カナダや欧州の理学療法士たちが提唱した新しい概念が、
「PEACE&LOVE」というケア法です。
🔹PEACE(急性期に行うこと)
- P=Protect(保護):痛みが強い間は、悪化を防ぐために保護。
- E=Elevate(挙上):腫れを抑えるために心臓より高く上げる。
- A=Avoid anti-inflammatory(抗炎症処置を避ける):冷やしすぎ・薬の乱用は慎重に。
- C=Compress(圧迫):適度な圧迫で腫れを制御。
- E=Educate(教育):患者自身が「次にどうするか」を理解する。
🔹LOVE(回復期に行うこと)
- L=Load(負荷):可能な範囲で動かし、回復を促す。
- O=Optimism(前向きな心):心理的要素が治癒を左右する。
- V=Vascularisation(血流促進):軽い運動で血の巡りを良くする。
- E=Exercise(運動):リハビリ運動で機能回復を進める。
つまり、昔の「RICE」は“守る”ことに重きがありましたが、
「PEACE&LOVE」は“育てる・動かす”ことに焦点を当てています。
現場での実例:接骨院・トレーナーの立場から
私の接骨院でも、以前は“とにかく冷やす”という考えが主流でした。
でも今は、ケガの状態を見ながら「短時間の冷却+早期リハビリ」を重視しています。
高校野球部の選手が足首を捻挫したとき、
以前なら「2〜3日は安静」と言っていましたが、
今では「1日目は軽く冷やす→翌日から血流を戻す運動」へ切り替えます。
結果、腫れが早く引いて、筋力低下も防げるケースが増えました。
冷やしすぎのサインと注意点
「冷やしたら皮膚が白い」「ピリピリ痛い」「感覚がない」
これらは冷やしすぎの警告サインです。すぐに外して常温に戻しましょう。
また、糖尿病や末梢神経障害のある方は、感覚が鈍いため要注意です。
往診先でも、「保冷剤を長時間当てて低温やけどになった」ケースがありました。
冷却は“薬”と同じで、使い方次第で毒にもなるんです。
冷やすことは「治すこと」ではない
冷却療法は、あくまで炎症を一時的に落ち着かせる手段。
炎症自体は、体が“修復作業を始める合図”でもあります。
最新の考え方では、
「冷やす」よりも「正しいタイミングで動かす」ことが回復を早める。
これが今のスポーツ医学の主流です。
けが直後はPEACE、回復期はLOVE。
この流れを意識すれば、ケガからの復帰がグッと早くなります。
■正しく冷やして、正しく動こう
もし、「これって冷やすべき?温めるべき?」と迷ったら、
接骨院などの専門家に相談してください。
たかやま接骨院では、
受傷直後のケアからリハビリまで、最新理論に基づいた対応を行っています。
「冷やす」だけで終わらない“動かすリハビリ”、ぜひ体験してください。
新潟市中央区長潟3-2-2 たかやま接骨院 高山 慶市
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