朝、接骨院に腰痛で通院される方には、どこか似た空気があります。
声が少し控えめで、「自分でもよく分からないんです」という戸惑いがにじんでいることが多いんですね。
「先生、朝起きて支度していただけなんです」
「布団から起きただけなんですけど、腰が…」
話を聞いていると、無理をした様子は見当たりません。
重たい物を持ったわけでもないし、転んだわけでもない。
ただ、いつも通りの朝を過ごしただけなんです。
でも実は、その“いつも通り”が、腰にとってはいちばんつらい時間になることがあります。
朝の体は、思っている以上にゆっくりしています
朝起きると、頭のほうはすぐに動き始めます。
今日の予定、時間のこと、やるべきこと。
一方で、体はそこまで急いでいません。
睡眠中、背骨のクッション役をしている椎間板は、水分をたくさん含みます。
そのため朝は、日中より少し厚みが増している状態になります。
これは整形外科の分野でも確認されている事実です。
たとえるなら、朝の腰は水を含んだスポンジのような状態。
やわらかいけれど、強く押したり、急にねじったりすると、形を崩しやすいんですね。
その状態のまま、いきなり日常動作が始まる。
ここが、朝の腰トラブルの入り口になりやすいところです。
布団・ベッドから起き上がるときの落とし穴
布団やベッドから起き上がるとき、
腹筋を使って勢いよく起きていないでしょうか。
この動き、腰には意外と負担がかかります。
特に朝は、体幹の筋肉がまだ目を覚ましていません。
改善のポイントは、一度横向きになること。
仰向けのまま起き上がらず、
横向きになってから、腕と脚を使って体を起こしていきます。
往診で高齢の方を診ていると、
この動作をとても丁寧に行っています。
体に「これから起きるよ」と声をかけるような、やさしい動きです。
若い人ほど、この工程を省いてしまいがちです。
元気だからこそ、勢いで起きられてしまう。
その差が、朝の腰には出やすいように感じます。
椅子から立ち上がる動作も、実は注意が必要です
朝食後、椅子から立ち上がるとき。
無意識に、腰だけで立とうとしていないでしょうか。
腰を丸めたまま立ち上がると、
背骨に負担が集中しやすくなります。
少し意識してほしいのは、
お尻を軽く後ろに引いて、少し下腹部に力を入れて足で立つこと。
背中を無理に伸ばそうとしなくても大丈夫です。
視線を少し前に向けるだけで、動きが楽になります。
高齢者スポーツ教室でも、
この立ち上がり方に変えただけで
「腰が楽になりました」と話される方が多いんですよ。
正座・あぐらから立ち上がるとき
正座やあぐらから立ち上がるとき、
一気に腰をひねって立っていないでしょうか。
このときの腰は、
曲げる、ひねる、支える、
その全部を同時に求められています。
改善のポイントは、
一度、四つ這いに近い姿勢を作ること。
手を床につき、体重を分散させてから立ち上がります。
見た目よりも、体へのやさしさを優先して大丈夫です。
腰は、そういう動きをきちんと覚えてくれます。
洗顔・洗面所での注意
洗顔のとき、腰から深く前に倒れていないでしょうか。
洗面台の高さが合っていないと、
この動きが習慣になりやすいんですね。
できれば、
軽く膝を曲げて、体全体で前に倒れる。
片手を洗面台につくのも良い方法です。
また、両膝を曲げて両膝を洗面台の面に当てながら体を支えるのもおすすめ。
洗面所は、冬場は特に冷えやすい場所です。
冷えた状態で前かがみになると、
腰の筋肉は一気に緊張します。
新潟で接骨院をしていると、
雪の日の朝に腰を痛める方が増える理由が、よく分かります。
着替えで多い、ズボンと靴下の動作
ズボンを履くとき、靴下を履くとき。
片脚立ちで行っていないでしょうか。
この動きは、
骨盤を傾けて、腰をねじる要素が重なります。
朝の筋肉は、まだ本調子ではありません。
支える力が足りない状態でバランスを取ろうとすると、
腰が無理を引き受けてしまいます。
改善策はとてもシンプルです。
椅子を使用して座って行うこと。
それだけで、腰の負担は大きく減ります。
高校バスケ部の現場でも、
ケガを防げている選手ほど、準備動作が丁寧でした。
速さより、安定感を大切にしています。
朝の身支度は、動作ではなく段取り
朝の腰を守るコツは、
気合や根性ではありません。
朝の身支度を、
勢いでこなす作業から、
段取りのある動きに変えていくことです。
・起き上がる前に一呼吸
・立ち上がるときは足を使う
・ひねらず、支えを作る
・冷えた場所では少しゆっくり
これだけでも、腰はずいぶん安心します。
訪問施術で、90代の方に言われた言葉があります。
「体はね、朝はまだ夢の途中なんだよ」
本当に、その通りだなと思います。
それでも痛みが出るなら
朝の動作を見直しても痛みが続く場合、
体の中に歪みや炎症が残っていることがあります。
炎症というのは、
体が「ここ、少し助けてほしい」と出しているサインです。
この判断には、専門家の確認が必要になります。
「そのうち良くなるだろう」と様子を見て、
長引いてしまった腰を、これまで何度も見てきました。
分からないときは、分からないままで大丈夫です。
誰かに頼ることも、体を守る大切な選択だと思います。
朝の腰は、体からのやさしい声
朝の腰は、体からの小さなメッセージです。
今日は大丈夫そう。
今日は少しゆっくりがいい。
今日は相談したほうがよさそう。
そんなふうに、毎朝そっと教えてくれています。
今朝の腰は、どんな声を出していたでしょうか。
少しでも違和感があったなら、
それは気のせいではありません。
体は、いつもこちらを守ろうとしています。
朝の身支度を、少しだけやさしくしてあげると、
腰も安心して、一日を支えてくれます。
新潟市中央区長潟3-2-2 たかやま接骨院 高山 慶市


