運動中の発汗により、水分だけでなく電解質(ナトリウム、カリウムなど)も失われます。
体重の2%以上の脱水が起きると、以下のような悪影響が起こります:
- パフォーマンスの低下(集中力・筋力・持久力の低下)
- 筋肉の痙攣(こむら返り)や熱中症リスクの上昇
- 心拍数の増加、疲労感の増強

そのため、適切なタイミング・量・内容の水分補給が、パフォーマンス維持・ケガ予防・リカバリーに直結します。
🕒 タイミング別:水分補給の正しい戦略
【1】運動前(30〜60分前)
▶ 目的:脱水を未然に防ぐ「事前準備」
- ✅ 摂取量目安:体重1kgあたり約5〜7ml
(例:60kgの選手 → 約300〜400ml)
- ✅ おすすめ飲料:
- 水
- 低濃度のスポーツドリンク(糖質3〜4%)
※胃腸に負担をかけず、吸収がスムーズ
- 経口補水液(軽度の脱水がある場合)
- ✅ 注意点:冷たすぎる飲料は胃の働きを弱める場合があるため、5〜15℃程度が理想
【2】運動中(特に60分以上の激しい運動)
▶ 目的:体温上昇・脱水・電解質喪失の抑制
- ✅ 摂取量目安:15〜20分ごとに150〜250ml(気温・湿度・運動強度により調整)
- ✅ おすすめ飲料:
- アイソトニック飲料(糖質5〜8%+電解質)
*人間の体液とほぼ同じ浸透圧の飲料、運動前に有効。
→ 吸収速度とエネルギー供給のバランス◎
- ハイポトニック飲料(糖質3%以下)
*人間の体液より低い浸透圧の飲料、運動中に有効。
→ 発汗が多い競技や夏場におすすめ(吸収が早い)
- ✅ 補給の工夫:
- 小まめに、喉が渇く前に飲む
- 試合やトレーニング中は**ルールの許す限り「少量頻回」**を徹底
- 氷水を含むことも、体温コントロールに有効
【3】運動後(できれば30分以内に)
▶ 目的:水分・電解質・糖質・アミノ酸の素早い回復
- ✅ 摂取量目安:失った体重×1.2〜1.5倍の水分補給
(例:運動後に体重が1kg減 → 約1.2〜1.5Lを補給)
- ✅ おすすめ飲料:
- リカバリードリンク(糖質6%+BCAAやたんぱく質含有)
→ 筋分解抑制・回復促進に効果
- スポーツドリンク+プロテインの併用
- 牛乳やココア(高たんぱく・カルシウム・電解質補給が同時にできる)
- ✅ 注意点:
- 「がぶ飲み」はNG。腎臓負担や水中毒(低ナトリウム血症)リスクあり
- 水分と一緒に塩分(ナトリウム)もしっかり補給
🧂 水分だけではダメ?「電解質補給」の必要性
特に重要なミネラル:
ミネラル | 働き | 不足すると… |
ナトリウム | 水分の保持、神経伝達 | こむら返り、低血圧、倦怠感 |
カリウム | 心臓・筋肉の機能維持 | 脱力感、不整脈 |
マグネシウム | 筋収縮、代謝補助 | 筋肉のけいれん、集中力低下 |
🔸→ よって、単なる水ではなく「適切な電解質入り飲料」を選ぶことが重要です。

💡 こんなときはどうする?
Q:水でOKな場面は?
→ 運動時間が30分未満で軽負荷なら、水でも十分です。
Q:ジュースや炭酸飲料は?
→ 糖分過多・胃腸への刺激が強いため、パフォーマンス中は避けるべきです。休養日や食事とともに飲むのは可。
Q:カフェイン入りは?
→ 利尿作用があるため、水分補給には不向き。ただし、適量のカフェインは持久力向上効果もあるので、試合前に使用する戦略もあります(要個人差確認)。
✅まとめ:スポーツ選手の水分補給の基本
タイミング | 飲料の種類 | ポイント |
運動前 | 水または低濃度スポドリ | 胃に優しく、吸収の良い温度で |
運動中 | ハイポトニックまたはアイソトニック飲料 | 15~20分ごとに小まめに補給 |
運動後 | リカバリードリンク・牛乳・プロテイン入り飲料 | 体重減少に応じて補給+塩分も |

🏃♂️【1】陸上短距離選手(水分補給の基本)
🔍 特徴:
- 100m~400mの高強度・超短時間競技
- 試合中の水分消失は少ないが、ウォームアップや練習時間は長い
💧水分補給のポイント:
タイミング | 内容 |
試合・練習前 | ・水または低糖質(3〜4%)のスポーツドリンク200〜400ml(30~60分前)・体温を下げすぎない温度(10〜15℃)が望ましい |
ウォームアップ中 | ・15〜20分ごとに1回、150ml程度の水分補給・汗が出る前から補給を開始 |
試合・タイムトライアル中 | ・競技時間が短いため不要(集中力優先) |
練習後 | ・発汗量に応じて体重減少×1.2~1.5倍の水分+ナトリウム・プロテインドリンクと併用も効果的 |

✅補足アドバイス:
- 筋けいれんや集中力低下を防ぐため、マグネシウム・カルシウム・クエン酸の摂取も有効
- 高温多湿下では短距離でも熱中症リスクあり
🏃♀️【2】陸上長距離選手(水分補給の基本)
🔍 特徴:
- 長時間持続する有酸素運動(5,000m~マラソンなど)
- 大量の発汗とエネルギー消費がある
- 脱水=パフォーマンス低下に直結

💧水分補給のポイント:
タイミング | 内容 |
運動前 | ・水またはスポーツドリンクを体重1kgあたり5〜7ml(例:60kg → 約350ml) |
運動中(60分超) | ・15〜20分ごとに150〜250ml・**ハイポトニック飲料(糖質3%前後+ナトリウム)**がベスト |
運動後 | ・失った体重×1.5倍の補水(+ナトリウム)・糖質+アミノ酸補給で筋分解を抑制 |
✅補足アドバイス:
- 練習前後の体重チェックで水分不足を「見える化」することが重要
- 脱水率が2%を超えると持久力が急激に低下する
- 冷たい飲料(5〜10℃)を適量ずつ摂ると、体温コントロールにも有効

⚽【3】サッカー選手(水分補給の基本)
🔍 特徴:
- 瞬発力+持久力が求められるインターバル型スポーツ
- 試合中の給水機会が限られる
- 発汗が激しく、水分+塩分の喪失が多い
💧水分補給のポイント:
タイミング | 内容 |
試合前 | ・30〜60分前にスポーツドリンク300〜500ml(糖質4〜6%) |
ハーフタイム | ・200〜300mlのスポーツドリンク+塩タブレット・急激な冷水摂取で胃を冷やさないよう注意 |
試合後 | ・体重×1.2~1.5倍の水分・ナトリウム・糖質・BCAAを含むリカバリードリンク |
日常的な練習中 | ・15〜20分ごとに1回、200ml目安で補給 |
✅補足アドバイス:
- 給水の時間が限られているため、「喉が渇く前に」飲む習慣をつけることが鍵
- 塩分補給(経口補水液や塩タブレット)が特に重要
- 予備ボトルを2本準備(練習用・試合用)し、内容を分けると効率的

🏀【4】バスケットボール選手(水分補給の基本)
🔍 特徴:
- 高強度・短時間の繰り返し(ジャンプ、ダッシュ)
- 汗量が多く、試合中に給水機会が少ない(タイムアウト、交代時)
💧水分補給のポイント:
タイミング | 内容 |
ウォームアップ前 | ・水または低濃度スポーツドリンク(300ml) |
練習・試合中 | ・交代時やタイムアウトに100~150mlずつ・ハイポトニック+電解質入り飲料がベター |
試合後 | ・失った体重分の1.2〜1.5倍の水分補給・プロテイン+炭水化物含有飲料が望ましい |
✅補足アドバイス:
- 室内競技でも脱水・熱中症リスクは高い
- 飲みやすくするために温度は5〜15℃に調整
- 練習中に水+スポドリを交互に摂ると胃腸への負担軽減
🔚 共通のアドバイスまとめ(4競技共通)
- 水分補給は「量」より「タイミングと中身」がカギ
- ナトリウム・糖質・マグネシウムを含む飲料を活用する
- 発汗量が多い選手は「プレ体重/ポスト体重」の比較習慣をつける
- “喉が渇いてから”では遅い! ――事前・中間・直後に「小まめに飲む」意識を。
