〜臨床現場とスポーツ現場からのリアルな実感〜
「最近疲れやすい」「立ちくらみが増えた」こうした相談を患者さん(スポーツ選手)から受けることがあります。施術をしていても筋肉の回復が遅い、トレーニング後の疲労感が長引く。そんな時に私が真っ先に疑うのが鉄不足です。
新潟市で32年間ものあいだ接骨院を営んでいると、腰痛や肩こりといった整形外科的な症状だけでなく、日常生活の栄養バランスが背景にあるケースにも出会います。その中でも鉄不足は非常に多く、特に女性や成長期の学生アスリートに目立ちます。
鉄不足が引き起こす不調
鉄は血液中で酸素を運ぶ役割を担うヘモグロビンの主成分です。不足すると全身の細胞に酸素が行き渡らなくなり、慢性的な疲労感や頭痛、集中力の低下を招きます。

高校女子バスケットボール部でトレーナーをしていた頃のことです。
毎日の走り込み練習で、どうしても最後にペースが落ちる選手がいました。フォームはきれいで、動きもぎこちなさはない。それなのにラスト1周になると足が重く、顔色も青白くなり、ベンチに戻るとしばらく立ち上がれないほどの疲労感を見せていました。
「練習量が多すぎるのかな」と思い、食事の聞き取りをしてみると、朝は菓子パンと野菜ジュースだけで済ませているとのこと。昼も部活で忙しく、食堂でうどんだけ。夜は母親の手料理を食べてはいるものの、本人は好き嫌いが多く、肉や魚を避けて野菜や炭水化物ばかりを選んでしまうことが多いと話してくれました。
念のため血液検査をお願いしたところ、鉄欠乏性の数値が出ていました。体は酸素を運ぶ力が不足していたわけです。本人も「走っていると頭がぼーっとする」と口にしており、栄養状態がパフォーマンス低下の原因と確信しました。
そこで、まずは簡単にできる改善策を提案しました。
・朝はパンではなく、おにぎりと味噌汁+小松菜のおひたし
・昼はなるべく肉や魚の入ったメニューを選ぶ
・練習後には牛乳だけでなく、みかんやオレンジと一緒に摂る
数週間後、彼女の走りは明らかに変わりました。最後の1周までペースを落とさずに走り切れるようになり、表情にも余裕が出てきたのです。本人も「前より体が軽い」と笑顔を見せ、チームメイトからも「別人みたいに元気になった」と声をかけられていました。
この経験を通じて、私は「栄養が足りない状態では、いくら努力しても成果は出にくい」という当たり前のことを改めて強く実感しました。特に鉄はスポーツ選手にとって無視できない栄養素だと、現場で痛感させられた一件でした。
スポーツ選手が「スポーツ貧血」になる理由
① 鉄分が不足するから
鉄は血液中で酸素を運ぶ「ヘモグロビン」の材料です。
走ったりジャンプしたりすると筋肉は大量の酸素を必要としますが、鉄が不足すると酸素をうまく運べなくなります。結果として「すぐ疲れる」「最後まで走れない」「集中力が落ちる」という状態になります。
特にスポーツ選手は、一般の人より鉄の消費が激しいため不足しやすいのです。
② 汗で鉄が失われる
運動中に汗をかくと、水分やミネラルだけでなく「鉄」も少しずつ体の外に出てしまいます。大量に汗をかく夏場の練習では、特に鉄不足になりやすくなります。
③ 足の裏で赤血球が壊れる(溶血)
ランナーやバスケット選手など、足に強い衝撃が繰り返しかかるスポーツでは「足底溶血」といって、着地の衝撃で赤血球が壊れることがあります。これも鉄不足や貧血の原因になります。
④ 消化管からの出血
長距離ランナーに時々みられるのが「胃や腸からの微小な出血」。強い振動やストレスで胃腸が荒れ、少しずつ鉄を失ってしまうことがあります。
⑤ 成長期はさらにリスク大
中学生、高校生や大学生など成長期の選手は、体を作るために鉄を多く必要とします。特に女子選手は月経による鉄の喪失も加わり、鉄不足が重なりやすいのです。

現場での実感
高校の女子バスケットボール部を指導していたとき、練習後に「足が重い」「頭がぼーっとする」と訴える選手がいました。食事を聞くとパンとジュース中心で鉄分が少なく、血液検査では明らかに鉄欠乏の数値。食事改善とサプリで鉄を補ったら、最後まで走りきれるようになりました。
スポーツ選手がスポーツ貧血になるのは、
- 運動で鉄を多く使う
- 汗で失う
- 着地の衝撃で血液が壊れる
- 消化管の負担
- 成長や月経による鉄不足

これらが重なり、普通の人より鉄不足になりやすいからです。
鉄には2種類ある
食品中の鉄は大きく分けて ヘム鉄 と 非ヘム鉄 の2つがあります。
- ヘム鉄:肉や魚に含まれ、吸収率が高い(15〜20%程度)。
- 非ヘム鉄:野菜や豆類に含まれ、吸収率は低め(2〜5%程度)。
ただし非ヘム鉄も、工夫次第で吸収率を高められます。ここに「食材の組み合わせ」の意味があるのです。
鉄の吸収を高める組み合わせ
① ビタミンCと一緒に摂る
非ヘム鉄はそのままでは吸収されにくいのですが、ビタミンCと一緒に摂ると吸収率が上がります。
- 例:ほうれん草×レモン、ひじき煮+オレンジ、小松菜のおひたしに柚子やすだち
接骨院に通う40代の女性患者さんは、貧血気味で疲れが取れにくいと悩まれていました。食事を聞くと野菜中心。そこで「鉄を多く含む食材にビタミンCを合わせてみて」とアドバイスしました。数日後「朝の目覚めが少し軽くなった」と報告を受けました。
② 動物性タンパク質と合わせる
肉や魚に含まれる成分は、非ヘム鉄の吸収を助けます。
- 例:ひじき+鶏肉、豆腐+鮭、レバー+野菜炒め
スポーツ専門学校での授業では、学生たちに「鉄を取るならレバーや赤身肉」という知識はあっても、野菜や豆と一緒に取ることまでは意識できていませんでした。鉄は単独で摂るより「助け合う組み合わせ」が大切なのです。
③ 避けたい組み合わせもある
反対に、鉄の吸収を妨げるものも存在します。
- お茶やコーヒーのタンニン:鉄と結合して吸収を妨げる
- カルシウムの多い乳製品:鉄の吸収を阻害することがある
「鉄分サプリを飲んでいるのに改善しない」という患者さんの多くが、食後すぐにコーヒーを飲んでいるパターンでした。食後30分〜1時間空けるだけでも吸収率は大きく変わります。
高齢者体操教室の現場での気づき
体育館での高齢者体操教室で「最近足がつる」という声をよく聞きます。運動不足や水分不足もありますが、血液の状態が関係していることも少なくありません。特に高齢者は食事量が減りやすく、鉄分不足になりがち。少量でも吸収効率を意識した食材の組み合わせが求められます。
実践しやすい鉄分アップ献立の例
- 朝:納豆+小松菜の味噌汁+みかん
- 昼:鶏むね肉とひじき入りサラダ+レモン風味ドレッシング
- 夜:牛赤身ステーキ+ブロッコリー+じゃがいも
こうした組み合わせを意識するだけで、鉄の吸収率は飛躍的に高まります。
私自身の体験
忙しい治療の合間に菓子パンで済ませていた時期がありました。その頃はどうも疲れやすく、夜も原稿を書く気力が続きませんでした。食事に赤身肉と緑黄色野菜を組み合わせるようにしたら、翌日の体の軽さがまるで違いました。やはり栄養は裏切らない、と改めて実感した瞬間でした。
まとめ
鉄不足は単なる栄養の問題ではなく、体の回復力・集中力・運動能力に直結する課題です。
- 鉄にはヘム鉄と非ヘム鉄がある
- ビタミンCや動物性タンパク質と組み合わせると吸収率が上がる
- コーヒーやお茶は食後すぐには避ける

臨床でもスポーツ現場でも、「食材の組み合わせ」に意識を向けるだけで体調が改善した例を数多く見てきました。腰痛や肩こりで通院される患者さんにも「食事を整えると体の回復が早くなる」と実感していただけることが多いのです。
鉄不足を放置すれば、慢性的な疲労やパフォーマンス低下につながります。まずは今夜の食卓で、鉄を含む食材にビタミンCやタンパク質を組み合わせてみてください。体はきっと素直に応えてくれるはずです。
新潟市中央区長潟3-2-2 たかやま接骨院 高山 慶市
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