「先生、立っているだけで腰が重くなるんです」
接骨院に通っている50代の男性患者さんからの言葉です。特別なケガをしたわけではないのに、デスクワークが続くと背中が丸まり、腰がだるくなる。よく見てみると、座っている時の骨盤の傾きが強く、体幹の筋肉がうまく働いていませんでした。
体幹は“お腹やお尻・胸・腰・背中まわりの筋肉の総称”で、単に腹筋や背筋だけを指すわけではありません。姿勢を支え、スポーツの動作を安定させる「軸」のような存在です。この記事では、体幹を鍛える意味や、日常やスポーツ現場での工夫を具体的に紹介します。
体幹が弱いとどうなる?
体幹が安定していないと、こんな現象が起こります。
- 座っているだけで腰や肩が重だるい
- 長時間歩くと疲れやすい
- ボールを投げる、ジャンプする動作でブレが大きい
- 高齢者では転倒のリスクが高まる

高校バスケットボール部でトレーナーをしていたとき、ジャンプ後の着地でふらつく選手が多くいました。体幹が弱いと膝や足首に過度の負担がかかり、ケガにつながることもあります。
体幹を支える筋肉たち
専門的には、腹直筋(シックスパックの筋肉)、腹横筋(お腹の深層にある筋肉)、多裂筋(背骨を支える小さな筋肉)、横隔膜や骨盤底筋群まで含めて“体幹”と呼びます。これらが連動することで、姿勢が自然と安定します。
体育館で行っている高齢者体操教室では、仰向けで膝を立ててお腹を触りながら「息を吐いてお腹をへこませて」と伝えると、最初はできない方が多いです。腹横筋(天然のコルセット)が働いていない証拠です。数週間続けると、腰痛が和らいだと報告されるケースがよくあります。
*腹横筋:内腹斜筋の内側、側腹の最も深層にある筋肉。腹式呼吸で息を吐く動作や、腹腔内部を圧迫し、お腹を凹ます働きがある。便秘や内臓の位置にも関与している筋肉です。
体幹を鍛えるメリット
- 姿勢が整い、疲れにくくなる
- 腰痛や肩こりが軽減する
- 運動パフォーマンスが向上する
- 転倒防止につながる

スポーツトレーナー専門学校での授業では、学生にわざと片足立ちになってもらいます。体幹が弱いとすぐにふらつきますが、日頃から鍛えている学生は軸がブレません。この差がプレーの安定感につながります。
実践!体幹を鍛えるシンプルな方法
プランク(基本中の基本)
両肘を床について体を一直線に保つ姿勢。30秒から始め、慣れたら1分を目指す。
→ 高校野球部の選手には「お腹が抜けないように腰を反らさない」と声をかけています。
デッドバグ(寝ながら体幹強化)
仰向けで手足を上げ、片腕と反対の足をゆっくり下ろす。お腹の力を抜かないのがポイント。
→ 腰痛持ちの患者さんにも安全に取り入れやすい方法です。
スクワット(体幹+下半身)
体幹を意識して行うと、ただの脚トレーニングが全身の安定トレーニングに変わります。
→ 高齢者教室では椅子からの立ち座り動作を繰り返すだけでも効果的です。
日常生活でできる体幹意識
- 電車で座るとき、背もたれにダラっともたれず骨盤を立てる
- 買い物袋を持つとき、片側だけでなく両手に分けて持つ
- 歯磨きのとき片足立ちをする

往診で伺う寝たきりの患者さんにも、呼吸法を通じて腹横筋を意識してもらうことがあります。「お腹で息をする」だけでも、体幹のスイッチが入るんです。
体験談から学ぶ体幹の大切さ
あるバスケットボール部のキャプテンは、試合終盤になると体がブレてシュートの精度が落ちるのが課題でした。そこで毎日の練習に体幹トレーニングを加えたところ、数か月後には安定感が増し、接触プレーでも崩れにくくなったんです。「体幹を意識したらシュートが入るようになった」と笑顔で話していた姿が印象的でした。
また、接骨院に通っている70代女性は「散歩のときふらつく」と言っていましたが、腹横筋を使った呼吸法と椅子スクワットを続けるうちに、「転ばなくなった」と自信を持てるようになりました。
まとめ|体幹は特別な人だけのものじゃない
体幹を鍛えるというとアスリートの専売特許のように思われがちですが、実際は誰にとっても必要な要素です。
デスクワークの人、高齢者、学生アスリート、主婦の方まで、全員に共通する“姿勢の土台”。
特別な器具は必要ありません。日常の動きに少し工夫を入れるだけで、体幹は少しずつ目を覚まします。
ブレない姿勢は、自信のある立ち姿にもつながります。体幹は筋肉以上に「生活の質」を支える存在。今日から一歩、意識してみませんか?
新潟市中央区長潟3-2-2 たかやま接骨院 高山 慶市
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