「休んでいるのに疲れが抜けない…」「ケガの治りが遅い…」
そんな声、実は高校のバスケ部の選手や往診先の患者さんからよく聞きます。疲労やケガの回復において、私が35年間接骨院の現場やトレーナー活動で痛感しているのは、「食事」の大切さ。何をどれだけ、いつ食べるかで、回復スピードはまったく違ってきます。

実際、ある中高年の男性患者さんは、膝の靭帯を痛めてから「とにかく寝て休めば治る」と思っていたそうですが、食生活の見直しと少しの栄養指導で回復がグンと早まりました。逆に、部活動の男子高校生が「トレーニングしても全然体が大きくならない」と言っていたので話を聞くと、夕飯が“唐揚げやカツと白米、味噌汁、漬物だけ”。たんぱく質が圧倒的に足りていなかったわけです。
この記事では、疲労・ケガからの回復を加速させるための食事と栄養の“本当に効く方法”を、現場の体験も交えながらお伝えします。
【疲労回復に効く!5つの栄養素】
① たんぱく質:筋肉の再生を担う主役
トレーニングやケガの回復には、まず“体をつくる材料”が不可欠。その代表が、「たんぱく質」。これはもう、筋肉修復の親方です。
赤身肉、鶏むね肉、ささみ、卵、納豆、豆腐、魚——どれも私の患者さんや部活動の選手たちが日常的に摂っている“回復めし”の定番食材。特に疲労が抜けない時期や、ケガから復帰を目指すときには、いつもの食事に「あとひと品」たんぱく質を足すだけで、見違えるような効果が出ます。
以前、トーレーナーとして携わっていた高校野球部で「たんぱく質1.5倍作戦」を実践したことがあります。選手の体重や活動量に合わせて、たんぱく質の摂取量を増やすというシンプルな方法。2ヶ月後、監督が「みんな体の厚みが違う!」と驚いていたのを覚えています。
まあ、私のトレーニング指導の成果も…ちょっとはあったと思います(笑)。
② ビタミンB群:エネルギー工場の潤滑油
体の中には“エネルギー工場”のような仕組みがあります。そこに欠かせない潤滑油のような存在が、ビタミンB群。
特に
☘️ビタミンB1
水に溶けやすく、体内にためておけない“水溶性ビタミン”のひとつ。しかも人間の体では作れないため、毎日の食事からの摂取が必須です。
不足すると、だるさ(倦怠感)、食欲不振、足のむくみ、さらには「脚気(かっけ)」といわれる神経や循環の不調を引き起こすこともあります。
ビタミンB1を多く含む食品
・肉類:赤身肉、豚ヒレ肉、豚もも肉、豚ひき肉、焼き豚、たらこ、うなぎ、カツオ節、
・野菜など:落花生、グリーンピース、枝豆、そら豆、ブロッコリー、ニンニク、芽キャベツ、ナッツ、大豆、まいたけ、玄米
☘️B6 肌の健康維持、皮膚の再生促進に役立つ。
ビタミンB6を多く含む食品
・魚類:まぐろ、かつお、さんま、まだい、
・肉類:牛レバー、ささみ、鶏レバー、豚ヒレ、牛肉もも、卵黄、
・野菜:バナナ、パプリカ、ブロッコリー、アボカド、西洋カボチャ、ニラ、黄肉種のキウイ
これらは、糖やたんぱく質を効率よくエネルギーに変換してくれる働きがあり、筋肉疲労の回復にもひと役買ってくれます。

トレーナー専門学校で栄養の講義をすると、よくこんな質問を受けます。「先生、バナナってそんなにすごいんですか?」
はい、すごいんです。
バナナにはビタミンB6だけでなく、カリウムやマグネシウムといったミネラルも豊富。これらは筋肉の痙攣(けいれん)予防にも関係しています。さらに糖質が多く、素早くエネルギー源として使えるので、練習前後の“即効補給食”としても優秀なんです。
持ち運びも楽でコスパも◎。バナナは、まさに“アスリートのポケット栄養庫”ですね。
③ ビタミンC:コラーゲン合成の鍵
ビタミンCは“ただの風邪予防”じゃありません。腱や靭帯、皮膚の修復に不可欠なコラーゲンを作るのに必要です。
味の濃い食事が好きな中年男性ほどビタミンC不足の傾向があるので、サラダにパプリカやブロッコリーを混ぜて「彩り+回復強化」に。

ビタミンCを多く含む食品
・アセロラ、パプリカ、芽キャベツ、ブロッコリー、キウイ、レモン、オレンジ、カボチャ。
④ ビタミンD+カルシウム:骨と筋肉の再生コンビ
骨折・捻挫・疲労骨折からの回復期に特に意識したいのがこの2つ。ある体育館での高齢者体操教室では、骨粗鬆症予防のため、鮭やしらす干しを活用したお弁当作りが話題になったことも。
ビタミンDを多く含む食品
魚類:サンマ、しらす干し、ブリ、イワシ丸干し、カレイ、サケ、
きのこ類:干ししいたけ、きくらげ、

⑤ オメガ3脂肪酸:体の“炎症ブレーキ”
さば、いわし、鮭などに豊富なオメガ3は、筋肉痛の軽減や関節の腫れに効果あり。ある陸上選手は、毎日サバ缶生活で脚の張りが軽減したと話していました。
オメガ3脂肪酸を多く含む食品(熱に弱い)
魚類:脂肪が多い魚:サケ、マグロ、マス、イワシ、ブリ、サバ、サンマ、
甲殻類:カニ、ムール貝、カキ、
その他:くるみ、えごま油、アマニ油、

【ケガ回復のための3つの食事ポイント】
① 消化にやさしい高たんぱく質を
ケガの初期は、内臓も疲れていることが多い。豆腐や卵、煮魚など“胃に優しいのに栄養満点”な食事が理想。実際、ギリシャヨーグルトはスポーツ選手にも高齢者にも人気。
② 炎症を悪化させる食品は避けたい
ファストフード、揚げ物、砂糖たっぷりのスイーツ。これらはおいしいけれど、体の回復にはマイナス。特に若い選手は「部活帰りに菓子パン3個」という生活を見直してほしい。
③ コラーゲン合成を助ける栄養はセットで
ビタミンC+亜鉛+鉄分。この3つは、靭帯や腱の修復を加速する「職人トリオ」。レバーが苦手でも、赤身のひき肉でしっかり補えます。

☘️ギリシャヨーグルトについて
ギリシャヨーグルトは、普通のヨーグルトよりたんぱく質が約2倍と豊富で、筋肉の修復や成長を助けてくれます。しかも、脂肪が少なくて糖質も控えめなので、体づくりを意識するアスリートや中高年の方にもぴったり。

さらに、乳酸菌がたっぷり含まれていて、腸内環境を整える働きも。私が指導していた高校のバスケットボール部員に、朝食やトレーニング後にギリシャヨーグルトを取り入れるように勧めたところ、「疲れにくくなった」「お通じが安定した」という声が増えました。
運動の成果をしっかり出すためにも、「食べる回復」は大切。ぜひ一度、食事に取り入れてみてくださいね。
ヨーグルトは、高たんぱく・低脂肪・低糖質で、筋肉の修復や体力維持にとっても頼れる存在。さらに、乳酸菌によって腸内環境も整いやすく、免疫力アップにもつながります。
私が指導していた野球部の選手たちも、毎日の食事に取り入れるようにした結果、「筋肉痛が軽くなった」「風邪をひきにくくなった」という声が多くなりました。
✅ 朝食に:フルーツやオートミールと一緒に食べると、消化に優しくエネルギーの持ちも良くなります。
✅ 昼食に:お弁当のお供に小さめのカップで。トレーニングがある日は、たんぱく質の追加源としても最適です。
✅ 夕食後やおやつに:甘酒やはちみつと合わせれば、寝ている間の「回復ホルモン」をサポートしてくれる優秀なリカバリーフードに。
一日どこかのタイミングで“ひとさじ”取り入れるだけでも、体はちゃんと応えてくれますよ。
【1日3食で整える|回復食のモデルプラン】
🔵 朝:
・雑穀ごはん
・納豆+卵
・豆腐とわかめの味噌汁
・キウイやオレンジ(ビタミンC)
🟡 昼:
・鶏むね肉のグリル or サバの塩焼き
・玄米 or オートミール
・ブロッコリーとパプリカのサラダ
・わかめスープや野菜たっぷり味噌汁
🔴 夜:
・豆腐ハンバーグ or 鮭のホイル焼き
・温野菜(小松菜・にんじん)
・しじみの味噌汁
・雑穀入りごはん(軽め)
・ギリシャヨーグルト(腸内環境も整える)
【忙しい人向け|コンビニ&サプリで“食べるリカバリー”】
・サラダチキン+玄米おにぎり
・ゆで卵+グリーンスムージー
・プロテインバー+ナッツ
・ソイプロテイン+豆乳割り
・ギリシャヨーグルト+はちみつ
【おすすめサプリ・プロテイン】
・エステプロラボ WPIプロテイン(胃にやさしく吸収も早い)
・オメガ3フィッシュオイル(関節の炎症に)
・ビタミンB群+C複合サプリ(食が細い中高年向け)
疲労回復もケガからの再生も、根っこは“食べること”です。
寝るだけでは回復しきれない。補強・修復・再生の材料をきちんと届けるには、日々の食事がカギ。

これはアスリートだけでなく、日常の疲れが抜けない中高年こそ意識したい視点。
「食べることが未来のカラダをつくる」
明日のあなたを元気にする一口を、今日のうちに。
(監修:柔道整復師/スポーツトレーナー/介護予防・機能訓練指導員認定柔道整復師 高山慶市)
新潟市中央区長潟3-2-2 たかやま接骨院 高山 慶市