ある日の外来で、70代の男性患者さんがこんなことを話してくれました。
「昼食後に必ず眠くなるんですよ。ご飯をしっかり食べたのに、体がだるくて動きたくなくなる。」
話を聞くと、昼は丼ものやラーメンを一気に食べる習慣があるそうです。血液検査では糖尿病予備軍と指摘されており、私も「あぁ、これは血糖値スパイクの影響だな」とすぐにピンときました。

血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇し、その後に急降下する現象を指します。日本糖尿病学会でもリスクが警告されており、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞の引き金になることもある。つまり「食後すぐの眠気やだるさ」は単なる日常のことではなく、将来の健康リスクを映し出しているサインなのです。
なぜ血糖値スパイクが起こるのか?
原因はシンプルです。短時間に大量の炭水化物を摂取すると、血糖値が急激に上がり、それに対応してインスリンが大量に分泌されます。その結果、今度は一気に血糖値が下がり、倦怠感や眠気が出る。これが「ジェットコースターのような血糖値の波」です。

現場でよく見かけるのは、
- 丼ものや麺類を早食いする学生
- パンやおにぎりを数個まとめて食べるビジネスパーソン
- 甘いお菓子を空腹時に食べる高齢者
こうした食べ方は血糖値スパイクの典型例といえます。
私自身の体験:講習会前の失敗
私も血糖値スパイクで痛い思いをした経験があります。ある学会発表の直前、緊張していたせいもあり、昼休みにカレーライスを急いでかき込んでしまったんです。最初は元気だったのに、30分もしないうちに強烈な眠気と頭の重さが襲ってきた。発表はなんとかこなしましたが、頭が回らず悔しい思いをしました。
「これは食べ方が失敗だったな」と反省した瞬間でした。
現場で学んだ「防ぐための工夫」
1. 野菜から食べ始める
接骨院に来る患者さんや、私が指導していた高校バスケ部でも徹底していた方法です。最初にキャベツやブロッコリーなどの野菜を口にすることで、食物繊維が糖の吸収をゆるやかにしてくれます。ある部員は、それまで練習後に白米をかき込んでいたのを、サラダを先に食べる習慣に変えただけで、午後の動きが軽くなったと話していました。
2. よく噛んで、ゆっくり食べる
「早食い=血糖値スパイクの引き金」です。高校野球部の選手たちに「20回以上は噛もう」と言い続けたところ、最初は面倒がっていましたが、実際に取り組んだ選手は「腹八分目で満足できるようになった」と報告してくれました。
3. 主食を置き換える
白米や白いパンだけだと血糖値が急激に上がりやすい。そこで、雑穀米や全粒粉パンに変えるよう提案しています。スポーツ専門学校の授業でこの話をしたとき、ある学生は「朝食を菓子パンから雑穀米のおにぎりに変えただけで、午前中の授業で眠くならなくなった」と驚いていました。
4. 食後に軽く動く
高齢者の運動教室で取り入れているのが「食後のゆるい散歩」。わずか10分でも血糖値の上昇が抑えられることが確認されています(厚生労働省 e-ヘルスネット)。「食べたらすぐ横になる」習慣を改めるだけで、夜の眠りも変わります。
高齢者と血糖値スパイク
往診先で出会った80代の女性は「甘いものが好きでやめられない」と話していました。毎日せんべいやまんじゅうを間食に食べていたそうです。そこで「おやつをフルーツに変え、時間を決めて食べましょう」とアドバイスしました。数週間後に再訪すると、「前よりも疲れにくくなった」と笑顔で話してくれたのが印象的でした。
ビジネスパーソンと昼食の工夫
40〜50代の男性患者さんに多いのは「ランチはコンビニ弁当と菓子パン、午後は眠気で仕事が進まない」というケースです。そんな方には、
- 野菜スティックやサラダを追加する
- パンではなくおにぎり+お味噌汁を選ぶ
- 甘い缶コーヒーを控える

といったシンプルな工夫を勧めています。実際、数名の患者さんから「午後の仕事で眠くならなくなった」と報告をいただきました。
まとめ:今日からできる小さな一歩
血糖値スパイクは誰にでも起こり得る現象ですが、食べ方やちょっとした工夫で大きく変えられます。
- 野菜から食べる
- よく噛む
- 主食を工夫する
- 食後に軽く動く
私自身も失敗を繰り返しながら学んできましたし、現場で指導してきた多くの患者さんや学生が実感しています。
「食べること」は毎日の習慣であり、体をつくる根本です。血糖値のジェットコースターに振り回されないために、明日の食卓から一つでも取り入れてみてください。
新潟市中央区長潟3-2-2 たかやま接骨院 高山 慶市
#血糖値スパイク #食後の眠気 #血糖コントロール #インスリン分泌 #糖尿病予防 #炭水化物の摂り方 #血糖値を下げる食事