現在日時:2026-08-05 JST
「接骨院や整骨院で施術を受けた日は楽なのに、数日すると肩や腰がまたつらくなる」
「整形外科でリハビリを続けているけれど、家では何をすればよいのかわからない」
そんな悩みを抱えていませんか。
施術やリハビリを受ける時間は、1週間のうち数十分から数時間ほど。それに対して、自宅や職場で座っている時間は、その何倍にもなります。せっかく体を整えても、毎日の座り方で肩や腰へ負担をかけ続けていたら、体としては「聞いていた話と違うんですけど……」と言いたくなるでしょう。
肩こりや腰痛は、姿勢だけで起こるわけではありません。筋肉の疲労、関節や神経の状態、過去のけが、運動不足、睡眠、ストレス、病気など、さまざまな要素が関係します。
それでも、日常生活で同じ場所へ偏った負担をかけない工夫は、自宅ケアの一つになります。
この記事では、タオルや座布団を使って骨盤を支える座り方、足組み・横座りの注意点、約1分で行える運動を紹介します。接骨院・整骨院での施術や、整形外科での治療・リハビリを支える生活習慣として、今日から無理なく取り入れてみてください。
肩こり・腰痛を防ぐ座り方とは
「正しい座り方」と聞くと、胸を大きく張り、背筋を一直線に伸ばした姿勢を想像するかもしれません。
ところが、力任せに胸を張ると、腰を反らしすぎたり、肩をすくめたりして、別の筋肉が疲れます。まるで証明写真を撮る直前のような姿勢を、一日中続ける必要はありません。
目標は、骨盤の上に上半身が無理なく乗り、楽に呼吸できる状態です。
骨盤の下には「坐骨」という左右一対の骨があります。硬い椅子に座ったとき、お尻の下で座面に当たる骨です。座位では、この坐骨が上半身を支える土台になります。
左右の坐骨へ均等に体重を乗せると、骨盤を起こしやすくなります。ただし、「骨盤を起こす」とは、腰を強く反らすことではありません。骨盤が前後に傾きすぎず、上半身を支えやすい位置へ近づけるという意味です。
骨盤が後ろへ倒れると、腰から背中が丸くなり、頭が体より前へ出やすくなります。首や肩の筋肉は、前へ移動した頭を支え続けることになり、肩が内側へ入る、いわゆる巻き肩のような姿勢にもつながります。
巻き肩は正式な病名ではありません。また、骨盤を立てれば、すべての肩こりや腰痛が治るわけでもありません。体格、筋力、柔軟性、病気やけがの有無によって、楽に感じる姿勢は異なります。
よい姿勢とは、一日中動かずに固まる姿勢ではなく、負担が少なく、いつでも次の姿勢へ動ける状態と考えてください。
肩こり・腰痛を招く座り方の主な原因
接骨院で相談を受けていると、「特別な運動はしていないのに、なぜ痛むのでしょう」と尋ねられることがあります。
生活の様子を伺うと、椅子へ浅く腰かけ、背もたれへ斜めに寄りかかっていたり、長時間足を組んでいたりするケースがあります。
浅く座ると骨盤が後ろへ倒れ、腰と背中が丸くなりがちです。その姿勢でパソコンやスマートフォンを見れば、頭も前へ移動します。座って休んでいるつもりなのに、首・肩・腰は支える仕事を続けているのです。
足組みも注意したい習慣です。短時間足を組んだからといって、骨盤や背骨が永久に変形するわけではありません。気をつけたいのは、いつも同じ脚を上にして長時間続けること。骨盤が片側へ傾き、上半身がねじれた姿勢になりやすいため、腰や背中へかかる負担にも左右差が生じます。
床で両脚を片側へ流す横座りも、同様に左右非対称になりやすい姿勢です。「横座りをしたから骨盤が歪んだ」と過度に不安になる必要はありませんが、毎日同じ側で長く座るのは避けましょう。
座り方だけでなく、椅子や机の高さも関係します。椅子が高くて足裏が床へつかないと、体を安定させるために足を組みたくなることがあります。机が高すぎれば肩をすくめ、低すぎれば前かがみになります。
姿勢を気合で直す前に、足裏が床または足台へついているか、肩を上げずに腕を置けるかを確認してみてください。
病気が隠れているケース
肩や腰がつらいと、座り方の問題だと考えたくなります。しかし、すべての痛みが筋肉の疲労や姿勢から起こるわけではありません。
日本整形外科学会は、腰痛に次の症状が伴う場合、自己管理だけで済ませず、医療機関を受診するよう案内しています。
・安静にしていても痛みが軽くならない
・時間とともに痛みが強くなる
・発熱を伴っている
・脚にしびれがある
・脚へ力が入りにくい
・尿漏れなど排尿の異常がある
腰痛の原因には、椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、骨折、感染症、腫瘍などがあります。尿管結石などの泌尿器疾患、婦人科疾患、消化器疾患、血管の病気が腰痛として現れるケースもあるため、症状だけで原因を決めることは困難です。
転倒、交通事故、スポーツ中の強い衝突後に痛みが出た場合も、接骨院・整形外科へ相談してください。骨粗しょう症のある方や高齢の方では、大きな事故でなくても骨折している可能性があります。
肩こりに加えて、腕や手のしびれ、物を落とす、腕が上がらないといった変化がある場合は、首の神経や肩関節の病気も考えられます。
肩や背中の痛みに、胸の圧迫感、急な息切れ、呼吸困難、冷や汗などが伴う場合は、心臓や血管などの緊急性が高い病気の可能性があります。厚生労働省は、胸が締め付けられるような痛みが数分続く場合や、急な呼吸困難がある場合には、迷わず119番へ連絡するよう案内しています。
接骨院や整骨院では、画像検査や血液検査による診断は行えません。しかし、さまざまな検査を行い、レッドフラッグ(精密検査が必要)なのかこのまま接骨院での施術が必要かを見極めます。原因を調べる検査が必要な場合は、提携している整形外科など医療機関で医師の診察を受けていただきます。
接骨院・整骨院・整形外科での治療を支える予防と改善方法
整形外科では、医師が診察や検査を行い、必要に応じて薬物療法、注射、装具、運動器リハビリテーション、手術などを選択します。
接骨院と整骨院は、どちらも柔道整復師が施術を行う施設です。骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷といった外傷への対応が中心となります。
通院先で炎症を抑えたり体を整えてもらうことと、自宅での生活を見直すことには、それぞれ役割があります。治療する側と患者さんが同じ方向を向くことが、二人三脚のケアにつながります。
自宅では、よい姿勢を長時間固定するより、こまめに体勢を変えましょう。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意し、可能な範囲で少しでも体を動かすことが示されています。
30分程度を一つの目安に、立ち上がる、数歩歩く、肩を回すといった短い中断を入れてみてください。30分は全員に共通する絶対的な基準ではないため、症状や仕事内容に合わせて調整します。
リハビリで教わった運動は、回数だけでなく目的を確認しましょう。同じ腰痛でも、症状や診断によって適した動きは異なります。鋭い痛み、しびれ、力の入りにくさが現れたら中止し、担当者へ相談してください。
食事では、肩こりや腰痛を特定の食品だけで治そうと考えず、主食、主菜、副菜を組み合わせます。肉、魚、卵、大豆製品などから、筋肉の材料となるたんぱく質を取る視点も役立ちます。持病があり、医師や管理栄養士から食事指導を受けている方は、その内容を優先してください。
睡眠と休養も体調を整える土台です。夜間に目が覚めるほど痛む場合は、寝具だけの問題と判断せず、医師など専門家への相談が必要です。
現場でよくある相談事例
接骨院では、「施術を受けた日は楽なのに、二、三日すると腰痛が戻る」という相談があります。
生活の様子を伺うと、自宅では柔らかいソファへ浅く座り、足を組んだまま長時間テレビを見ている場合があります。こうしたケースでは、施術だけを繰り返すのではなく、座る環境や休憩の取り方も一緒に見直します。
私が伺っている訪問施術先(往診)では、ご自宅で普段使っている椅子や座布団を確認できます。低い座椅子から物を取るたびに腰を丸めていたり、床ではいつも同じ方向へ横座りしていたりと、院内では見えにくい生活上の負担が見つかります。
高校スポーツの現場でも、競技動作だけが問題になるわけではありません。授業中は椅子へ浅く座り、休憩中は下を向いてスマートフォンを見る。体を鍛えている選手でも、長時間同じ姿勢を続ければ首や肩は疲れます。
私が講師を務めていたスポーツ専門学校で姿勢について指導すると、「胸を張る」という言葉を意識しすぎて、腰を大きく反らす学生もいます。そこで、坐骨で座面を捉え、足裏で床を支え、肩の力を抜くところから練習します。
トレーナーとして行っていた高齢者運動教室での指導時では、立派な運動より、「テレビの途中で一度立つ」といった小さな習慣の方が生活へなじむことがあります。ただし、ふらつきや転倒歴がある方は、安定した椅子や手すりを使い、一人で無理をしないようにします。
コルセット・テーピングやタオルも、姿勢を永久に変えるものではありません。動きを意識するための補助役です。主役は、体の反応に気づき、姿勢を変え、必要な治療やリハビリを続けることにあります。
今日からできるタオル2枚のセルフケア
座面奥へ折ったタオルを置く
バスタオルを二つ折り、または四つ折りにして、椅子の座面奥へ置きます。左右の坐骨がタオルへ乗る位置に座りましょう。
タオルで座面後方へ小さな段差をつけ、お尻が膝より少し高くなる位置を探します。骨盤が後ろへ倒れにくくなり、上半身を骨盤の上へ乗せやすくなる方がいます。
座ったら、足裏全体が床または足台についているか、腰を無理に反らさず呼吸できるかを確認してください。
丸めたタオルを腰(ベルトの位置)へ当てる
厚みを増やしすぎると、腰が反ったり、体が前へ滑ったりします。坐骨の痛みや強い圧迫感が出たら、タオルを薄くするか使用をやめましょう。
この方法がすべての肩こり・腰痛を予防するかどうかはわかりません。症状や椅子の形によって反応が異なるからです。体が楽に感じ、痛みやしびれが増えないことを基準にしてください。
腰と背もたれの間に隙間がある方は、タオルを筒状に丸め、腰のくびれ付近へ横向きに当てます。タオルは腰を前へ強く押す道具ではありません。背もたれとの隙間を埋め、腰の自然な湾曲を支える補助として使います。腰を反らしすぎず、楽に呼吸できる太さへ調整しましょう。
厚生労働省の腰痛予防対策資料では、長時間座る際の工夫として、クッションなどの腰当てを椅子と腰部の間へ入れる方法が示されています。また、腰椎の自然な湾曲を保つ方法として、バックサポートや丸めたタオルを利用する例も紹介されています。
ただし、タオルを入れれば、すべての腰痛が軽くなるわけではありません。使用中に腰の痛みや脚のしびれが強くなる場合は、すぐに外してください。
あぐらでは二つ折りの座布団を使う
床であぐらをかくと腰が丸くなる方は、座布団を二つ折りにし、手前側へ坐骨を乗せます。お尻を少し高くすると、骨盤を起こしやすくなる方がいます。左右の坐骨へ均等に体重を乗せ、胸と肩の力を抜いてください。
膝や股関節に痛みが出る場合は、あぐらにこだわらず椅子へ移ります。股関節の手術後など、医師から動作を制限されている方は自己判断で行わないでください。
約1分の肩・骨盤リセット
椅子に座ったまま、次の三つの動きを各20秒行います。
1.肩の上げ下げ
肩を耳へ近づけるように持ち上げ、息を吐きながらストンと下ろします。肩の力を抜きながら、3回ほど繰り返しましょう。
2.肩甲骨寄せ
肘を体の横へ置き、左右の肩甲骨を軽く近づけます。胸を強く反らさず、3秒ほど保ってから力を抜きましょう。
3.骨盤ゆらし体操
足裏を床につけ椅子に座り、骨盤をゆっくり前後へ動かします。骨盤を前へ傾けるときは背骨を軽く反らし、後ろへ傾けるときは背骨を軽く丸めます。
背骨だけを無理に動かさず、骨盤の動きに背骨が自然についてくるイメージで、痛みのない範囲で3往復しましょう。終わったら、前と後ろの中間にある、楽に座れる位置へ骨盤を戻します。
運動中に痛みやしびれが強くなる、力が入りにくい、めまいや息苦しさが出る場合は中止してください。症状が治まらないときは、医師など専門家へ相談しましょう。
まとめ|よい姿勢は「頑張りすぎない」がポイント
肩こりや腰痛を予防する座り方は、胸を張り、背すじを伸ばしたまま固まり続けることではありません。
私が認定セラピストとして学んだ国際マッケンジー協会日本支部の講義では、座り姿勢を整える際に、わかりやすいイメージを使います。
椅子に座り、「頭のてっぺんの髪の毛を、天井から軽く引っ張られている」と想像してみてください。背すじが自然に伸びたら、そこから力を10%ほど抜いて、少しだけ姿勢を戻します。
伸びきったところで頑張るのではなく、ほんの少し緩めるのがポイントです。胸を張りすぎず、腰も反らしすぎず、骨盤の上に上半身が自然に乗る位置を探しましょう。
「髪の毛を上へ引っ張られ、そこから10%戻す」
このイメージなら、難しい解剖学の知識がなくても、力みすぎない座り姿勢をつくりやすいと思います。
姿勢を支えにくい場合は、身近なタオルや座布団も利用できます。
椅子では、折ったタオルを坐骨の下へ置き、お尻が膝より少し高くなるように調整すると骨盤は起きます。
腰と背もたれの間に隙間がある場合は、丸めたタオルで腰の自然な湾曲をやさしく支えましょう。
床であぐらをかくときは、二つ折りの座布団へ坐骨を乗せると、骨盤を起こしやすくなります。
ただし、タオルや座布団は、骨盤や背骨を矯正する道具ではありません。無理なく座れる環境をつくるための補助役です。厚くしすぎたり、痛みを我慢して使ったりしないでください。
足組みや横座りも、直ちに骨盤や背骨を変形させるわけではありません。
気をつけたいのは、いつも同じ側で長時間続けることです。気づいたら両足を床へ戻し、ときどき違う姿勢へ変えましょう。
どれほど座り方を整えても、同じ姿勢を続ければ体は疲れます。30分程度を一つの目安に、立ち上がる、数歩歩く、肩を動かすなど、座りっぱなしを中断してください。
接骨院・整骨院・整形外科で受ける施術やリハビリは、回復を支える一つの柱です。もう一つの柱になるのが、自宅や職場での過ごし方です。
治療を任せきりにするのでも、一人だけで頑張るのでもありません。自宅ケアで感じた変化を通院先へ伝え、体の状態を確認しながら二人三脚で進めていきましょう。
まずは、いつも使っている椅子とタオルを2枚用意してみてください。
左右の坐骨を感じながら座り、髪の毛を天井から引っ張られるように背すじを伸ばす。そこから力を10%抜き、肩を一度ストンと下ろします。そして30分ほどしたら、立って数歩歩きましょう。
肩と腰をいたわる生活改善は、そんな小さな一歩から始まります。
体格や症状によって、楽に感じる姿勢は異なります。セルフケアで痛みやしびれが増える場合は無理に続けず、担当する医師や施術者へ相談してください。
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、診断や個別の治療に代わるものではありません。症状、診断名、年齢、既往歴によって適した運動や姿勢は異なります。通院中の方は、担当する医師、理学療法士、柔道整復師などの指示を優先してください。
この記事の監修者
高山 慶市(柔道整復師)
・たかやま接骨院 院長
・開業30年以上
・延べ40万人以上の施術実績
・日本超音波骨軟組織学会認定 基礎運動器系超音波技師
・キネシオテーピング協会認定指導員 ・ケアマネジャー ・トレーナー
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参考情報
厚生労働省
「腰痛対策」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/1911-1_2d_0002.pdf
「職場における腰痛予防対策の推進について」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb9484&dataType=1&pageNo=2
「こんな時は迷わず119へ」
https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/urgency.html
「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/undou/index.html
日本整形外科学会
「腰痛」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lumbago.html
「肩こり」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/stiffed_neck.html
「しびれ(上肢のしびれ)」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/paralysis_of_arm.html

