最近、「なんか疲れやすくなった」「朝起きてもスッキリしない」そんな声を、患者さんやトレーニング現場でよく耳にします。
私自身、50代に差しかかったころから、同じ睡眠時間でも疲れが残っていたり、少し動いただけでだるさを感じるようになりました。毎日施術もして、運動指導もして、それなりに体には気をつけてきたつもりだったのに…。
──「もしかして、足りてないのは“エネルギー”じゃなくて、“材料”か?」
そう気づいたのは、トレーナーとして携わっていたある高校バスケット部の選手が、練習後の疲労回復が異常に遅くなっていた時のことでした。
疲れやすい人の共通点とは?
私の接骨院に来る患者さんでも、年齢に関係なく「常に疲れている」タイプの方がいます。共通しているのは、
- 朝食を抜くことが多い
- 運動しても栄養補給が適当
- タンパク質をあまり摂っていない
この「タンパク質不足」が、実はアミノ酸不足に直結しているんです。
筋肉や内臓、酵素、ホルモン、免疫細胞まで、アミノ酸が材料になっているものはとにかく多い。つまり、アミノ酸が不足すれば、体の修復も、代謝も、免疫も、全部うまく回らなくなる。
疲れが抜けない原因が、睡眠でもストレスでもなく、「アミノ酸不足」だったという人、実は多いんじゃないかと感じています。

アミノ酸って、そもそも何者?
専門的な話をしすぎると退屈になるので、ざっくり言うと、アミノ酸は「タンパク質を構成する最小単位」です。
口から食べた肉や魚、卵や大豆などのタンパク質は、体内でアミノ酸に分解されてから、再び体の各部位で使われる──まるで“レゴブロック”のような存在。
アミノ酸は全部で20種類。そのうち9種類は「必須アミノ酸」と呼ばれ、体内では作れないため、食事から摂るしかない。
中でも、特に「疲れやすさ」に関わるのが以下の3つ:
- バリン
- ロイシン
- イソロイシン
これらは「BCAA」と呼ばれ、筋肉の分解を抑え、回復を早めてくれる“現場監督”のような役割を果たしています。
食事だけで足りている?
ここで問題になるのが、「本当に必要な量が摂れているのか?」という点です。
私が見てきた患者さんの多くは、
- 朝はパンとコーヒーだけ
- 昼はうどんか丼もの
- 夜はおかずは食べるけど量は少なめ
こんな食生活です。これでは、必要なアミノ酸の量には到底届かない。
あるスポーツ専門学校で講師をしていた時、生徒に1日分の食事内容を提出してもらったところ、必要量の約60%しか摂取できていなかったという結果もあります。
「栄養は取っているつもり」ではなく、“足りていない現実”をまず知ることが大切です。
実際に試して変わったケース
トレーナーとして担当していた高校野球部の主力選手で、夏の大会前に急激に疲労がたまり、打撃も守備も精彩を欠いていた選手がいました。
「ご飯はしっかり食べてる」と言っていたので、内容を聞いてみると、タンパク質がかなり少なかった。そこで、練習後にホエイプロテイン+BCAAサプリメントを摂取するように指導。
1週間後には、
- 朝の目覚めがスッキリ
- 練習中の集中力が持続
- 翌日の疲れが軽減
と、明らかな変化が見られました。
アミノ酸をただ摂ればいいわけじゃなく、「タイミング」と「種類」が大事だということが、この例からもよくわかります。
どんな人に必要なのか?
アミノ酸の補給が特に効果を発揮しやすいのは、
- 運動をしているが疲れが取れにくい人
- 食事に偏りがある高齢者
- リハビリ中の方
- 朝の目覚めが悪い人
- ストレスや免疫低下を感じている人
などです。

とくに、私が往診で伺う80代の患者さんでも、アミノ酸を意識して取るようにしてから転倒が減ったケースもあります。筋肉だけでなく、神経伝達やバランス感覚にもアミノ酸は関与しているんですね。
サプリメントは必要?
結論から言えば、「足りない分を補う」意味でサプリメントは非常に有効です。
もちろん理想は食事から摂ることですが、
- 食が細くなっている高齢者
- 忙しくて食事が乱れがちな人
- トレーニング量の多いアスリート
などは、サプリメントを上手に使ったほうが、かえって負担が少なく済みます。
ただし、“何でもかんでも摂ればいい”というものではありません。
- 目的に合ったアミノ酸の種類を選ぶ
- タイミングを工夫する(運動前後、就寝前など)
- 飲みやすさ・続けやすさも重視する
このあたりを考慮するだけで、効果の実感がまるで違ってきます。

✅ アミノ酸を多く含む食材一覧(高たんぱく・必須アミノ酸豊富)
🥩【動物性たんぱく質】
食材 | 特徴 |
鶏むね肉(皮なし) | 高たんぱく・低脂肪。ロイシン豊富で筋肉維持に最適 |
卵(特に卵白) | 完全たんぱく質。必須アミノ酸バランスが抜群 |
牛赤身肉 | バリン・ロイシン・イソロイシンが豊富(BCAA) |
豚ヒレ肉 | ビタミンB1も多く、疲労回復に◎ |
魚(サバ、サケ、マグロなど) | DHA・EPAも含み、健康に効果的 |
乳製品(ヨーグルト、チーズ、牛乳) | リジン、トリプトファンが多く含まれ、睡眠や精神安定にも役立つ |
🌱【植物性たんぱく質】
食材 | 特徴 |
大豆(納豆・豆腐・味噌・おからなど) | 植物性で唯一「完全たんぱく質」。リジン豊富 |
高野豆腐 | 乾燥状態で非常に高たんぱく。アミノ酸スコアも高い |
テンペ | 発酵食品で消化吸収も良い |
そば | 穀類でありながらリジンを多く含む |
アマランサス・キヌア | 植物でありながら必須アミノ酸を含む“スーパーフード” |
🔑 アミノ酸摂取のポイント
- 🔁 動物性+植物性を組み合わせて食べることで、アミノ酸スコアが向上します。
- 💤 トリプトファン:豆腐、バナナ、牛乳 → セロトニン・メラトニンの材料 → 睡眠の質向上
- 🧠 チロシン:納豆、チーズ → やる気・集中力UP
- 💪 BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン):筋肉の分解を防ぎ、疲労軽減効果あり
🍽 おすすめの食べ合わせ例
- 朝食:納豆ごはん+卵+味噌汁
- 昼食:鶏むね肉のソテー+野菜+玄米
- 夕食:焼き魚+豆腐サラダ+ごはん
- 間食:プロテインドリンク or ヨーグルト+バナナ
最後に:体の声に耳を傾けよう
疲れは、身体が出す「メッセージ」です。
無理をしてごまかすのではなく、「材料が足りていないのかも?」と、一度立ち止まって考えてみてください。
そして、アミノ酸を味方につけて、
- 疲れにくい体
- 回復しやすい体
- 動ける毎日
を手に入れていきましょう。
年齢や体力に関係なく、アミノ酸はきっと、あなたの“次の一歩”を後押ししてくれるはずです。
新潟市中央区長潟3-2-2 たかやま接骨院 高山 慶市